褐色細胞腫は手術が済んでも終わりではない 良性・悪性判定や今後の検査の話
前回までのあらすじ
手術は成功! そして無事に退院!
10日ぶりのB大学病院に懐かしさを覚える
退院して10日後、今日は外来受診の日です。10日ぶりのB大学病院。1階の受付機に診察券を通し、プリントアウトされた紙を持って診察に向かいます。
ここで大きな手術して、こないだまで入院してたんだよなあ…と、少し懐かしい気持ちになりました。
主治医のS先生の診察室に通され、まずは傷口のチェックです。ベッドに転がって、お腹を診てもらいます。「うん、キレイですね。問題ありません」とのこと。
手術から約20日経ちましたが、まだじんわりとした痛みがあり、うつぶせの姿勢になることはできません。「こればかりは時間薬なので」だそうです。
再発・転移に備えて今後も検査が必要 方針は?
ここからは、今後に関する話。
こちらの記事で書いたように、褐色細胞腫は手術して取り出せば終わり、という病気ではありません。もし悪性だった場合、後年、再発や転移を起こします。ですので、定期的に通院して検査を行います。
ただ、一口に検査するといっても、話は簡単ではありません。検査の費用や手間の問題があるので、詳しい検査をたくさん行えばいいというものではないのです。たとえば、私は入院中に、24時間分のオシッコを溜める畜尿という検査を何度かやりましたが、これはけっこう費用がかかるらしいです。
要するにバランスの問題で、どれくらいの頻度で、どれくらいの精度の検査をするかは、難しい話です。
なお、褐色細胞腫の診療ガイドラインは存在しますが、これは手術する段階までしか定まっておらず、「事後の検査に関しては特にガイドラインはない」そうです。
こんな話をS先生から聞かされて、じゃあ私の場合はどうするかというと、
「実はまだ、取り出した褐色細胞腫の分析結果とかが揃っていないものでして…。今後の方針については、また後日相談ということで…」
また2週間後に外来受診することになりました。
良性か悪性か? 判定方法の解説
さて2週間後、再びS先生の診察室。すでに手術から1か月以上が経ち、ようやくうつぶせの姿勢ができるようになった頃です。
こちらの記事で書きましたが、褐色細胞腫という腫瘍は良性・悪性の判定が難しいのです。取り出した腫瘍を顕微鏡で調べても、良性か悪性かはわかりません。
早い話、良性か悪性かは結果論。後年、再発や転移が生じれば悪性。何も起きなければ良性というわけです。
では良性か悪性か判定する手段がまったくないかというと、そうではありません。次のような方法があります。
「褐色細胞腫は5㎝以上、つまり大きかったか?」
私の褐色細胞腫は18㎝でしたから、文句なしで「はい」ですね。
「患者は男性か?」
私は男性ですから、これも「はい」。
こんな感じで、いろいろな質問項目があり、「はい」が多いほど悪性褐色細胞腫の可能性が高い、というのが判定手段です。
過去に悪性褐色細胞腫を発症した人のデータから、「腫瘍が大きいほど悪性の可能性が高い」「男性だと悪性の可能性が高い」といったことが臨床的な経験として蓄積されているので、これを利用するわけです。
こうした結果に加え、さらに「GAPPスコア」と呼ばれる難しいデータも参照して、良悪の判定を行います。
悪性の可能性は低いとの判定結果 今後の方針も決定
で、肝心の私の結果ですが、トータルで見た結果、悪性の可能性は低いそうです。
もっとも、これは絶対の判定方法ではなく、あくまで参考。極端な話、質問に対する「はい」の個数がゼロだとしても、悪性である可能性は消しきれません。
といっても、「悪性の可能性は低いので、詳しい検査を頻繁にやる必要はないと思います」というのがS先生の見解。
具体的には、数ヶ月ごとに血液検査と検尿(コップ一杯分を採る普通のやつ)を、1年に一度はCTを撮りましょうか、との提案。先生の方針に、私も同意しました。
検査結果も良好 そして褐色細胞腫の写真を見せてもらう
あとは、検査結果をひとつ教えてもらいました。
24時間分のオシッコを溜めて、その中に含まれる成分量を調べる畜尿という検査を、手術後に一回やっていました。畜尿は手術前にもやっていて、要はビフォーアフターを調べる意図です。
検査結果はというと、手術前は異常に高かった数値(100くらい)が、手術後は一気に正常値(1以下)まで下がっていました。褐色細胞腫を切除した効果は、てきめんです。
そして本日の診察の〆は、
「取り出した腫瘍の写真ってあります?」
「ありますよ。出しますね」
S先生は、パソコンをクリックして画面に写真を表示してくれました。
「写真だと大きさがわかりにくいんですが…」
おおー、これが私の褐色細胞腫か。表現が難しいですが、ワ○ピースに出てくるゴムゴムの実を赤黒くした感じ。健康な臓器という雰囲気は、まったくありません。グロいです。
そして先生の言うとおり、確かに大きさがわかりにくいです。一応、腫瘍のそばにモノサシが添えられていますが、この構図では「18㎝デケェェェ!!」感がまったく出ていません(笑)
次の写真では、すでにスライスされてバラバラの腫瘍が。取り出した後は顕微鏡などで検査するので、スライスされてしまうのです。
バラバラ写真を見て気づいたのですが、腫瘍の内部には、かなり空洞がありました。リンゴのように中身が詰まっているのではなく、ピーマンみたいに内部に空間があるイメージです。
実物を見たかったというのが本音ですが、検査に回される以上、こればかりは仕方ないですね…
次回は3ヶ月後。CTを撮って、血液検査と検尿をすることに決まりました。
→次の話 褐色細胞腫を切除して体調は良くなった?