数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

大学病院への転院が決定! そして褐色細胞腫の詳しい説明を受ける

前回までのあらすじ
A病院でさまざまな検査を受けた結果、ついに褐色細胞腫と確定。A病院では手術できないため、転院先を探しているところ。

B大学病院から受け入れOKの返事 ただしいったんA病院を退院

A病院に入院して9日目、もうすっかり入院生活に馴染んでいる私です。困っていることといえば、ヒマな時間を潰すものがなくて退屈なことくらい。妻が差し入れてくれた大量の本は、すでに読み終えてしまいました。

点滴の類はすでに全て外され、身軽な状態。あ、点滴で一番痛いのって、針を刺す瞬間でも抜く瞬間でもないんですね。針を固定するために腕にベッタリ貼り付けられたテープ、これをはがす時が猛烈に痛いです。粘着力が強いテープなので、はがす時に毛を持っていかれるからです。瞬間的な痛さなら、手術後の傷の痛みなんかより、テープをはがす時の方が断然上です(笑)

私の病気・褐色細胞腫は、A病院での手術ができないため、現在の焦点は転院先探しです。この日、昼過ぎに担当の先生が私のベッドにやってきました。

「転院の件なんですけど、B大学病院が受け入れてくれることに決まりました!」

受入先を探し始めてから数日、ようやく転院先が決定です。いくつかの病院に打診していたものの、結局本命のB大学病院です。

「それで急なんですけど、明日退院できます」

えっ、退院? 今の病院から、次の病院に直行するんじゃないの?

先生の話によると、明日A病院を退院して家に帰り、B大学病院は後日、外来受診してくださいとのこと。先日の検査で狭心症でないことも判明しましたし、今すぐ生きるの死ぬのという緊急性はなさそうですから、そういう形になったのでしょう。実際、入院して以降は発作的なものも起きておらず、事情を知らない人が見たら、「この患者健康じゃん。なんで入院してるの?」と思ったはず。

B大学病院での外来受診の予約を取ってくれるそうなので、退院後、可能な限り最速の日時でお願いしました。

「B大学病院に連絡して受診の予約を取りますが、明日の日中には返事があるはずです。それを待って予約日時が確定してから退院ということで」

A病院では、原則として退院は午前・入院は午後となっています。しかし、明日の何時にB大学病院から返事があるか定かではありません。退院の時刻が読めませんが、A病院は我が家から車で10分なので、連絡すればすぐ迎えに来てもらえます。家と病院が近くて助かります。

ちなみに病院食ですが、明日の昼食は「なし」にしました。午前退院になった場合、昼食が無駄になるからです。もし退院が昼以降にズレ込んだ場合は、病院のコンビニで弁当でも買えばOKです。

「仕事に行ってもよい」とのこと

退院の時に貰わなければいけないのが、会社に提出する診断書。先生によると、なんと仕事に行っても大丈夫だそうです。

ただし、当然ですが制約がつきました。

褐色細胞腫はお腹の中にあり、刺激を与えるとカテコラミンというホルモンを過剰に放出し、身体の変調をもたらします。ですから、かがんで腹部を圧迫する・重いものを持つ等の作業は、褐色細胞腫を刺激するのでNG。デスクワーク・軽作業だけにとどめてくださいとのこと。

さらに、私は泊まりを含む変則勤務の仕事をしていますが、泊まり勤務や深夜業は身体に負担が大きいのでダメ。

キリよく(?)今度の日曜日までは療養が必要(出社不可能)ということにし、来週月曜日から出社可能である旨の診断書を書いてもらいました。

先生の話は続きます。明日、退院する前に、これまでの経過や診断結果などをまとめて説明してくれるとのこと。家族同席OKということで、妻に来てもらうことにしました。

先生の説明は9時半から。もし、それまでにB大学病院から予約日時確定の連絡があれば、先生の説明を受けた後、そのまま退院して妻と一緒に帰れるという寸法です。

先生の説明 遺伝的要素もあるらしい褐色細胞腫

翌朝。

9時半ちょっと前に看護師さんが呼びに来て、先生が説明してくれる部屋に向かいました。部屋では、すでに妻が待っていました。久々の対面です! が、先生や看護師さんが目の前にいますから、「抱き合って感動の再会」みたいな展開にはなりませんでした(笑)

先生の話が始まりました。開口一番、先生からは、

「すみません、まだB大学病院から連絡がなくて…。退院はもうちょっと待ってください」

残念。説明が終わって妻と一緒に帰れると期待していたのですが。

血液検査の結果表や、検査画像も交えて説明してもらいました。私はすでに説明を受けた内容でしたが、妻は初めてです。

妻が喰い付いた(?)のが、遺伝子の話。褐色細胞腫は数万人に一人の珍しい病気ですが、最近の研究によると、どうも褐色細胞腫になりやすい遺伝子というものが存在するようです。つまり、この病気には遺伝的な要素があり、妻としては娘が同じ病気にならないかを心配していました。

先生によると、希望すればそのあたり詳しい検査もできるけれど、まずは私の褐色細胞腫を手術で切除しないと話は始まらないとのことです。

先生の説明 褐色細胞腫は良性・悪性の判定が難しい

妻の質問は続きます。

「主人の腫瘍って良性なんですか? 悪性なんですか?」
「それがわからないんです」

先生いわく、褐色細胞腫は特殊な腫瘍で、手術で取り出した腫瘍を顕微鏡で調べても、良性・悪性の判定がつかないそうです。早い話、良性か悪性かは結果論でしかわからない。手術して10年後に再発・転移が判明することもあり、そうなれば悪性。相当の期間が経って何もなければ良性。

では、何年無事に過ぎればセーフなのかというと…これが難しい。極端な話、20~30年経って再発・転移が見つかる可能性もゼロではないと。何年経っても「もう100%大丈夫」というお墨付きは得られないわけです。

「ただ、MRIで診た限りでは、他の臓器にまで飛んでいる形跡は今のところないですね」

先生の説明は非常にわかりやすく、こちらの質問にも丁寧に答えていただきました。この先生だけでなく、今回の病気で関わった先生すべてがそうでしたが、腰が低く親切で丁寧でした。不快な思いをしたことは一度もなかったです。そうしないと病院間の厳しい競争に生き残れない事情はあるのでしょうが、医師 = 傲慢というイメージは、もはや古いようです。

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