数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

褐色細胞腫の手術から9日後 ついに退院!

前回までのあらすじ
手術から6日。最後まで身体に残っていた傷口のドレーンも抜かれ、ついにすべての管が身体から無くなった。あとはいつ退院できるか。

手術から1週間経過 血圧や血糖値はどう変化した?

手術から7日後の朝です。すべての管から解放された状態で快眠でき、気持ちの良い目覚めでした。1週間前の今日は手術してたんだなあ、早いなあ…などと思いました。

手術をしたことで、私の身体にどのような変化があったのでしょうか。

褐色細胞腫の症状の一つに、高血圧があります。褐色細胞腫からは血圧を上昇させるカテコラミンが多量に放出されるので、患者は慢性的な高血圧になりやすいのです。といっても、私は高血圧の症状がない珍しい患者だったようで、せいぜい上が120・下が90くらい。

入院中は朝・昼・晩と血圧測定をしますが、上が110・下が80といった感じ。手術前よりも、やや下がりました。

もう一つ、褐色細胞腫による症状が糖尿病です。手術前、私には糖尿の気がありました。手術後の計測では、血糖値の数値は90代といったところ。これは正常の範囲内です。

血糖値は一日の中でも変動しやすい数値なので、一概には言えませんが、手術前は100~120くらいでした。血圧同様、血糖値も下がったことになります。褐色細胞腫を切除した効果は、それなりに出ているようです。

手術8日後 血液検査で異常なく退院決定!

入院といえば採血がつきものですが、最後の採血は、手術8日後の朝でした。これで異常がなければ明日退院できます。昼食を食べ終えてベッドでまったりしていると、先生がやってきました。

「血液検査ですけど、何も異常ありませんでした。明日退院です」

褐色細胞腫の手術は危険がつきもの。入院前には、もう二度とシャバの空気(笑)を味わえないことも覚悟していましたが、それも無駄な心配に終わってくれました。

「それで今後の話ですが…」

こちらの記事で説明したように、褐色細胞腫は時を経て再発・転移が起きる可能性があります。手術で切って取り出せば終わりではなく、事後検査のため、定期的な通院が必要になります。手術で取り出した褐色細胞腫は解剖され、いろいろ検査されます。その結果を踏まえて、今後の検査・通院方針を立てるとのことです。

「傷口の状態もチェックしたいので、とりあえず10日後くらいに一度来てください」

その場でスケジュールを確認し、次回の通院日を決定しました。

来月から仕事復帰OK 制限も特になし

あとは、職場に提出する診断書を先生に書いてもらわなければいけません。キリよく今月末までは自宅療養とし、来月1日から復帰可能ということにしてもらいました。「この業務には従事してはいけない」という制限は、特になし。

私は泊まりを含む変則勤務の仕事をしていますが、「泊まり勤務はダメ」という制限も特につけないそうです。ただ、1ヶ月くらいは身体が万全とはいかないだろうから、泊まり勤務をやるかどうかは、自分で身体の調子を見ながら勤め先と相談してくれとのことです。

「何か質問はありますか?」
「運動とか食事とか、そっちの方の制限はあります?」

私が聞くと、先生は顔の前で手を左右に振りました。

ないです。もう何にも。傷口の痛みに触るようなことさえしなければ」

手術が終わっても、日常生活でいろいろ制限が付される病気は少なくないと思いますが、そういうものが褐色細胞腫には一切なし。極端な話、再発・転移の可能性さえなければ、もう二度と病院のお世話にはならなくて済みそうな病気ですね。

手術から9日後に退院 少し寂しさも感じる

手術から9日後、ついに退院です。最初のA病院への緊急入院から始まって、B大学病院への転院、そして手術入院…。まったく嬉しくない、ろくでもないイベントではありましたが、いざ終わりとなると不思議なことに名残惜しいものです。

看護師が私のところに来て告げました。

「まだ診断書が完成していないそうで…。もう少し待ってください。診断書をお渡ししたら退院手続きです」

大丈夫ですよ。もう少し病院の空気を味わっていたいくらいですから。入院着を脱いで私服に着替え、荷物もまとめ、いつでも出られる態勢だけ作っておきました。そして、看護師が診断書の入った封筒を持ってきてくれました。

「これで大丈夫ですので、入退院受付センターに行ってください。お大事にー」

サクッとした感じの見送りです。退院というイベント、病院側からすれば日常の一コマにすぎないでしょうから。しかし、患者側からすると、やはり感慨深い瞬間です。

退院手続きは、以前の検査入院の時に経験していたので、特に戸惑うことはありませんでした。妻に「退院手続き終わった」とLINEをし、私は院内の喫茶店でコーヒーを飲んで待っていました。手術前にラーメンを食べた店です。

コーヒーを飲みながら、私は入院生活を振り返っていました。病棟の病室、手術室、ICU。もう二度と足を踏み入れることはないだろう。お世話になったこの喫茶店や院内コンビニも。そう思うと、一抹の寂しさを感じました。

妻から着信があり、駐車場に着いたとのことです。病棟の入口で落ち合うことにし、私は席を立って会計を済ませました。荷物を持って病棟の外に出ます。久しぶりに吸う外の空気は、とても澄んだ感じでした。

妻が向こうから歩いてくるのが見えました。私からの第一声は、「生きて出てこられたよー(笑)」でした。

→次の話 褐色細胞腫は手術が済んでも終わりではない 良性・悪性判定や今後の検査の話