数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

手術前最後の外来 入院の説明を受ける そして驚きの提案が

前回までのあらすじ
手術で入院するまでの間、毎週外来に通うことになっている私。早いものでもう手術10日前。今日は入院前の最後の外来である。

薬の服用 ついに一日8錠に突入

こちらの記事で説明したように、褐色細胞腫の手術前にはカルデナリン(ジェネリックではドキサゾシン)という薬を継続的に服用します。まずは一日1錠(2㎎)から始め、手術直前には一日8錠(16㎎)まで増やすのが理想です。

このカルデナリン、一日7錠に突入したあたりから、日中に眠気を感じるようになりました。薬剤師は「眠気の副作用はない」と言っていましたが、血圧を下げる作用の薬なので、たくさん飲めば頭がボーっとして眠気につながることもあるかなぁ、という気がします。一応、先生には話しておきました。

「身体が辛いですかね?」
「いや、そこまでは全然。しんどいとか歩く時にフラつくとか、そういうのはないです」
「わかりました、それなら予定通り増やしましょう。いよいよ一日8錠です」

処方箋がプリントアウトされて私に渡されます。これを薬局に出すのも最後です。最初に薬局に行った時は、怪訝な顔をされて「これってどういう…?」と聞かれました。「褐色細胞腫の手術を受けるための準備です」と言ったら、腑に落ちたようでした。

褐色細胞腫には禁忌の造影剤CTを打診される

そのあと、先生から一つ驚きの提案をされました。

「これは相談なんですが…手術前に造影剤を使ってCTを撮りたいと思うんですよ」

なぜ驚きかというと、褐色細胞腫の患者に造影剤を使うのは禁忌というのが常識だからです。造影剤が褐色細胞腫を刺激し、血圧が急上昇する危険があるからです。

しかし、これだけ大きな腫瘍だと、血管と腫瘍の位置関係を術前にしっかり把握しておきたいとのこと。そのために、リスク承知で造影剤CTを撮りたいそうです。

「どうでしょう? 危険もあるので、無理にとは言いませんが…」

このセオリー破りの提案は驚きました。大学病院ともなれば、常識の範囲から飛び出すようなことはしない保守的なイメージがあったので。しかし、必要とあればセオリーからはみ出して禁忌と言われることにも踏み込む。正直、大学病院という組織を見直しました(笑)

「わかりました、受けます」
「そうですか、助かります。もちろん、何かあったときのために医師が同席しますので」
「まあ大丈夫だと思います。前のA病院でも、褐色細胞腫だと判明する前に造影剤を使って検査しましたけど、全然何もなかったので」

ビデオで手術に関する注意事項の説明を受ける

ということで、CTを受けるため、手術2日前の入院と決まりました。

「このあと、入院の説明を受けることになります。看護師が来ますので」

診察室から出て中待合に座っていると、看護師が来て、この後の動きを説明されました。まずは、手術を受ける人向けの説明ビデオを見る。見終わったら、入院手続きの説明をするので、担当者のところへ行ってくれとのことでした。

まずは、手術を受ける人向けのビデオの視聴です。外来フロアの片隅に常時ビデオを流しっぱなしのテレビがあって、そこの前のソファに座って見るという形です。覚えている内容をいくつか書いてみます。

  • いわゆる腹式呼吸のやり方。手術後は一時的に身体が弱るので、肺活量も下がります。しっかりした呼吸を確保するための方法として有効らしいです。
  • 手術前はヒゲを剃っとけ。手術時は口に酸素マスクをくっつけますが、ヒゲが残っていると酸素マスクを密着させにくい。手術前にキレイに剃っておいてくださいとのこと。
  • 痛み止めの話。手術後は痛み止めを投与します。手元のボタンを押すと点滴から痛み止めが投与される仕組みですが、痛ければ遠慮なく使ってくださいとのこと。痛みを我慢すると、血圧が上がって身体によくないからだそうです。
  • 傷口にあまり響かない痰の出し方。手術後はどうしても痰が出やすくなるとのこと。普段なら大きく咳をして吐き出せばいいのですが、手術後は傷に響くので、咳をするのも楽じゃない。ということで、傷口に負担をかけずに痰を排出する方法があるのです。

30分ほどビデオを見ていたら、「あ、ここはさっき見たな」という内容が出てきた、すなわちビデオが1ループしたので、視聴終了です。

新型コロナのワクチンは接種していない

あとは入院手続き等の説明を受けるため、指示された場所に行きました。担当の看護師から「入院患者用のパンフレット」を渡されて、それに沿って説明を受けていくという進め方です。パンフレットは、以前B大学病院に入院した時に同じものを貰っていたので、中身は理解済です。

一つ確認されたのが、新型コロナのワクチンを接種したかどうか。

そろそろ自分の年代にも接種の順番が来るかな、と思っていたぐらいのタイミングで今回の病気が発覚。最初の入退院から手術まで1ヶ月半ほどあったので、接種しようと思えばできました。が、あれは副反応が強烈なので、接種して身体に負担が掛かり、下手に褐色細胞腫を刺激したらヤバいと思って、やめときました。

「受けてません」と言ったら、「あーそうなんですね。接種するなら手術の2週間前までなんですが、もう来週なんで無理ですね。まあ感染しないように気をつけてください」と言われました。

なお、これから入院日まで、毎朝検温して用紙に記入します。それを入院時に提出します。

→次の話 【手術2日前】いよいよ入院! 禁忌と言われる検査も決行