数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

ついに手術予定日が決定! 褐色細胞腫の手術に必要な準備とは?

前回までのあらすじ
褐色細胞腫と判明した私は、A病院からB大学病院に転院。入院生活にもすっかり慣れ、あとは手術がいつになるかが焦点。

手術予定日が決定! しかしなんと…

B大学病院に入院した私ですが、様子見や念のためという雰囲気で、別に検査や治療をするわけでもなく、毎日のんびりとした入院生活を送っていました。前のA病院でもやった畜尿という検査(24時間分のオシッコを溜め、それを調べる)をしたくらいです。

コロナで病院も大変でしょうに、医療資源を圧迫して申し訳ないなあというのが正直な気持ち。

現在の最大の関心事は、「手術はいつになるのか?」です。妻や両親からも、毎日のように「手術の予定は決まった?」と連絡が入ります。入院してから1週間後の日の夕方、先生がやってきました。

「今日のカンファレンスで、手術の日が決まりましたよ」

おお、ついに決まったか。2週間後か? 3週間後か? それとも1ヶ月後か? …と思っていたら、先生から告げられた日は2ヶ月後! ずいぶん先のスケジュールです。

これは私の褐色細胞腫がデカすぎて周りの臓器と接触しており、いろいろな科のバックアップが必要な手術なので、全体のスケジュール調整をすると、どうしてもそれぐらい先になってしまうとのことです。

具体的に言うと、肝臓と接触していそうなので、腫瘍を取り出す際に肝臓を触ることも考えられ、肝臓チームが応援に入れる体制をとらなければいけない。また、腫瘍のすぐ近くに大動脈もあるため、何かあった場合に備えて血管外科にも応援を頼むそうです。

それでなくとも褐色細胞腫は厄介なもの。下手に腫瘍に触れるとカテコラミンが大量放出され、血圧が急上昇する危険があるため、手術の難易度は上がります。腫瘍がデカかろうが小さかろうが、それなりの準備期間が必要ということでしょう。

手術に向けて血圧を下げるカルデナリンという薬を服用

準備というと、この時の私はすでに手術に向けて、カルデナリン(ジェネリックではドキサゾシン)という薬を毎日飲んでいました。このカルデナリンは、血管を拡張させて血圧を下げる薬です。

なぜ手術に向けてカルデナリンを服用するかというと…

褐色細胞腫は、血圧を上昇させるカテコラミンを過剰放出します。血圧を上昇させるということで、血管は常時キュッと締まった状態になっています。

しかし、褐色細胞腫を摘出するとカテコラミンの過剰放出が止まり、血圧が下がります。つまり、今までの「血管がキュッと締まった状態」から「血管が拡張した状態」に移行するのです。

「血管が拡張した状態」に移行すること自体はよいのですが、あまりにも急な変化があると、身体に大きな負担がかかります。そこで褐色細胞腫を摘出する前に、あらかじめ「血管が拡張した状態」に身体を慣らしておくのがよいわけ。そのため、血管を拡張させる効果があるカルデナリンを継続服用するのです。

薬ですから、初手から大量に飲むと身体によくありません。手術に向けて徐々に量を増やしていきます。最初は一日2㎎(1錠)からスタート。最終的に、手術直前には一日16㎎(8錠)の服用が望ましいというのがガイドラインだそうです。

血圧を下げる薬ですから、副作用で身体がつらくなることもあります。ですので、絶対に一日16㎎(8錠)を服用しなければいけないわけではないそうです。ただ、たくさん服用できるのであれば、それに越したことはないと。

逆に言うと、身体に有害な事象が出なければ、もっとたくさん飲んでもいいそうです。先生いわく、「ガイドラインでは一日最大16㎎(8錠)となっているけど、32㎎(16錠)まで増やしても大丈夫という見解もある」とのこと。ただ、私の場合はガイドラインにしたがって、一日16㎎(8錠)が最終目標という形をとりました。

カルデナリン服用のコツ 「夜多め」が無難

カルデナリンの話をもう少し。

手術が近づいて服用錠数が増えてきたら、朝・昼・夜の3回に分けて飲みます。一日8錠の場合は、3・2・3という配分がスタンダードでしょうか。ただ、配分はどうでもよく、とにかく定められた錠数を一日の中で飲めばいいそうです。

先生のアドバイスでは、夜の服用を多めにした方が無難とのこと。というのも、血圧を下げる薬ですから、朝・昼で大量に飲んでしまうと日中の活動に支障をきたすかもしれない。しかし、夜ならばあとは寝るだけなので、多少副作用が出ても生活への影響が少ないだろう、ということです。ただし、夜中にトイレに行く時なんかにフラついて倒れたりするリスクはあるので、そこは様子を見て調整してくれと言われましたが。

実際に服用しての感想も書いておきます。

一日12㎎(6錠)までは、まったく何も感じなかったです。が、一日14㎎(7錠)になったあたりから、日中に眠気を感じるようになりました。薬剤師いわく「眠気の副作用はない薬」とのことですが、血圧を下げる薬ですから、頭がボーっとしてしまって眠気につながることもあるんじゃないかなあ、というのが私の感覚ですかね。

大量に水分を摂取するよう指示された

薬の服用以外にも、手術に向けて指示されたことがありました。水分の大量摂取です。

「もうとにかく水分を摂りまくってください」
「具体的には、一日どれくらい飲めばいいですか?」
「そうですね。最低2リットルは」

なぜ水分摂取が必要か説明を受けたのですが…すみません、正確なところは忘れました(笑) 確か以下のような感じだった気がします。

先ほど書いたように、褐色細胞腫が体内にあると「血管がキュッと締まった状態」になります。血管が細くなっている、それはつまり、体内を循環している血液量が少ないことを意味します。

手術後は「血管が拡張した状態」になり、言ってみれば「血管の容量が増え」ますから、今まで通りの血液量だと全体を満たすのに足りません。もちろんそれに対応するために、身体は血液を増やそうとするはずですが、血液の大半は水分ですから、水分が不足していると血液製造ができない。そうならないよう、水分を身体に貯えておくのが必要です。

ようは手術後に備えて、「体内に水分が大量にある状態」をあらかじめ作っておこうという話で、そのための水分大量摂取です。

→次の話 いったんB大学病院を退院! 仕事にも復帰…と思いきや