数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

【手術2日前】いよいよ入院! 禁忌と言われる検査も決行

まだ先だと思っていたのに、ついにこの日が来たか…

手術2日前、いよいよ今日は入院です。スケジュールとしては、午前中に入院手続き。午後からは残された検査を受ける予定です。

入院前に新型コロナの抗原検査を受ける

今日から私はしばらく入院、妻と娘は実家に帰ります。マンションは無人になるので、冷蔵庫一掃のため、朝食は余り物が主体(笑) 正直、緊張で食欲はあまりなかったですが、しっかり食べて体力をつけなければと思い、無理気味に腹に詰め込みました。冷蔵庫の中は空っぽになりました。

荷物の準備は前夜のうちに入念に済ませておいたので、身支度さえ整えれば出発できます。今日は検査も予定されており、なるべく早く入院しとくべきだろうと8時過ぎに出発。

車に乗る前、マンションの前で、私と娘のツーショット写真を撮りました。親子ニッコリのいい写真。万が一のことがあったら、これが葬式の写真ということで。

私が車を運転し、大学病院に無事到着。妻と娘には喫茶店で待っててもらい、まずは新型コロナの抗原検査(PCR検査ではなく)を受けました。その場ですぐに結果は出ないため、検査後は解放され、もしクロだった場合は呼び出されるとのことでした。

廊下の椅子で検査の順番を待ち、呼ばれたら屋外へ出てそこで検査。なんで屋外で検査するんだ? と疑問に思いましたが、あとでわかりました。検査では鼻に綿棒みたいなのを突っ込んでグリグリするので、鼻がムズムズしてクシャミが出るかもしれません。その時にウイルスを周りにばらまく危険があるので、屋外でやるわけです。

検査結果は知らされませんでしたが、そのまま入院できたので陰性だったことになります。そりゃあ新型コロナは未だに日本人の約2%しか罹ってないんだからシロでしょ…と思ったのですが、いやいや、俺の褐色細胞腫は確率0.0000…%の病気だなと。

妻・娘と別れて病室へ ついにここまで来てしまった…

コロナ検査の後は、入退院受付窓口で手続きをします。入退院は原則午前中ということもあり、人でごった返していました。番号札を取ったら、まだ20人以上先。

待っている間、妻と娘は搬送用カート(?)を借りてきて、入院の荷物を車から持ってきてくれました。

ようやく受付の順番が回ってきました。「前にも一度入院しています」と最初に告げたら、「それでしたら、いろいろわかってらっしゃいますね」ということで省き気味の説明。窓口での手続きも終わり、待っていた妻と娘のところへ行きました。いよいよ入院病棟へ向かいます。

「○○ちゃんがおす!」

私の荷物が載ったカートを、娘が一生懸命押してくれます。エレベータに乗り、指定された階へ。前回の検査入院時は「糖尿病内科」のフロアでしたが、今回は「内分泌外科」なので初めて降りるフロアです。

子どもは病棟まで立ち入れないので、妻と娘とはエレベーター前でお別れ。二人が行ってしまい、私は一人になりました。

いよいよここまで来てしまった…

それが正直な感想でした。手術が成功しないと、もう二度と外の空気は吸えない、妻や娘とも二度と会えない、と。

危険を承知で踏み込んだ造影剤CT 幸い何も起きなかった

病室で荷物を取り出していると、主治医のS先生がやってきました。

「こんにちは。ご気分はいかがですか?」
「いよいよ逃げ場がなくなった~って感じで緊張してます(笑)」
「(笑)」

そんな感じでちょっと雑談をしたあと、先生は書類を取り出しました。

「先日説明したように、このあとCTを撮りますので。同意書とかいろいろ記入していただかないといけなくて」

前回の記事で書きましたが、手術前に腫瘍と血管の位置関係を把握しておくために、造影剤CTを行うことになっていました。造影剤を使うと褐色細胞腫を刺激してしまい、血圧が急上昇する危険があるのですが、それは承知のうえ。要するに、デメリットよりメリットが上回るとの判断です。

「お腹がカラの状態で撮りたいので、申し訳ないですけど、CTが終わるまで昼食は我慢してください。終わったら食堂とかで好きなものを食べて大丈夫ですから」

呼ばれたのは14時過ぎでした。さすがにもうお腹ペコペコです。順番を告げに来た看護師から、薬の入った袋を手渡されました。危険なCTなので、万一に備えて医師が同席するのですが、その時の処置に使う薬のようです。

CTの撮影室に入ります。同席したのは主治医のS先生(内分泌科)ではありませんでした。素人考えですが、血圧急上昇→心臓関係のトラブルなので循環器の先生か、あるいは血圧のコントロールということで麻酔科の先生か。

まずは造影剤を入れるための針を右腕に刺します。それから、造影剤なしの状態で一度撮影。

「それじゃ、これから造影剤入れますね。何かあったらすぐ言ってください」

造影剤が入ってきましたが、少し身体が熱くなったと感じる程度で、変調は何も感じませんでした

「気分が悪くなったりしてませんか?」
「いやー、大丈夫です。全っ然変化ないです」

そのまま何も起きずに終了。何かトラブルが起きた場合、もしかしたら手術自体が延期になるかもしれなかったので、本当によかったです。

入院病棟の1階には喫茶店が入っており、そこで昼食にしました。もう14時半なので席はスカスカ。塩分をしっかり摂る目的でラーメン、もとい、豪勢にチャーシュー麵を注文しました。手術前の景気づけということで。

もしかしたら、これが人生最後のラーメンになってしまうかも…などと思いながら、最後の一滴まで汁を飲み干しました。そのあと、コンビニで塩辛いおつまみを買ってから病室に戻りました。

→次の話 【手術前日】もしもに備えて遺書を作成 そして眠れない夜