数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

【A病院・入院5日目~】転院先を探しつつ残った検査を続ける

前回までのあらすじ
検査の結果、どうも褐色細胞腫らしいことが判明したが、難しい手術のため、残念ながらA病院では対応できない。焦点は転院先探しとなり、私の入院生活は「まったりモード」に突入した。

転院先はどうやら家から遠くなさそうで安心

「本命はB大学病院ですけど、C病院にも打診しています」と担当の先生。

いま入院しているA病院は、我が家から車で10分ほどの距離。そして、B大学病院もC病院も、鉄道で30分かからずに行ける病院。家から近いのは助かります。家族が荷物を届けてくれる時や手術日に来院する時に、家から1~2時間もかかる距離だとしんどい。それに、手術後も通院が必要でしょうから。

打診した病院からの返事を待ちつつ、残った検査を受けていきます。

24時間血圧測定は異常なし

前回の記事で書きましたが、褐色細胞腫の人は高血圧であることが多いため、24時間の血圧測定を行いました。自動で血圧を測ってくれる機械を身体にぶら下げて、30分に一回計測されます。

24時間を終えて、機械を外してもらいます。その日のうちに検査結果が届きました。

はい、バッチリ正常です。せいぜい上(収縮期)が130弱。下(拡張期)が85程度。このようにパッと見の異常がないからこそ、腫瘍が十数㎝に育つまで発見できなかったわけですが…

褐色細胞腫は甲状腺にも異常が出ることがある

血圧の検査以外にも、甲状腺のエコー検査も受けました。甲状腺は、首・喉のところですね。

褐色細胞腫(腫瘍)は腹にあるのに、なぜ甲状腺を検査するのか? 先生の説明によると、褐色細胞腫の人は甲状腺にも腫瘍があるケースが多いそうで、そのために甲状腺も診ておくそうです。

検査開始わずか1分。

「大丈夫ですね。ビックリするくらい何もないです 笑」

あっという間に終了。検査そのものより、病室から検査室へ行き来する時間の方が長かったです。

心臓の検査はMRIで行う そして結果は異常なし

あとは心臓の検査。初日に救急外来へ駆け込んだ際、心臓関係の数値が悪かったため、「狭心症の疑いあり」とされていました。そのため、造影剤を使って心臓カテーテル検査を行いたかったわけですが、造影剤は褐色細胞腫の人に使うのはNG。精度は劣りますが、MRIでの検査になりました。

A病院でのMRIは二回目。前回は全身を撮りましたが、今回は心臓をピンポイント狙い。スタートから10分くらい進んだところで、

「機械が止まっちゃって…。再起動かけるんで、本当にすみませんけど、もう一度最初からお願いします」

そんなことあるんかい(笑)

翌日の夕方、心臓(循環器)の先生がやってきて、検査結果の説明を受けました。

「心臓のMRIやりましたよね。狭心症かもしれないって話だったんですが、大丈夫でした」
狭心症じゃなかったってことですか?」
「そうです。救急を受診した時に数値が悪かったのは、褐色細胞腫のせいで起きた一時的な現象だと思われます」

狭心症ではなかったのは、かなりの進展。というのも、もし狭心症ならば、血液をサラサラにする薬を使うのが定石。ところが、血液サラサラになってしまうと、褐色細胞腫を切除する外科手術が難しくなります。手術には出血がつきものですが、血液がサラサラだと、出血が止まりにくくて危険だからです。

狭心症の治療をすると、褐色細胞腫の手術ができない。褐色細胞腫の手術をしようとすると、狭心症の治療ができない。「あちらを立てればこちらが立たず」の難しい状態に陥っていたのですが、狭心症でないことが判明したため、治療方針を褐色細胞腫一本に絞ることが可能になりました。

外注していた血液検査の結果が届く 褐色細胞腫で確定

副腎に腫瘍があると判明したのち、詳細を調べるために、外部機関に詳しい血液検査を依頼してありました。腫瘍は特定のホルモンを放出しており、それは当然血液中に残りますから、血液を詳しく調べれば腫瘍の種類がわかるわけです。その結果が届き、先生が説明してくれます。

検査項目がバーッと並んだ結果用紙の中で、メタネフリンと名が付く項目が何個かありました。先生は、そこに赤ペンで線を引きます。このメタネフリンが、褐色細胞腫だと診断するのに有用なのだそうです。

「これなんですが、基準値は1未満なんですね」

オイ、50超えてるやん。

「これでもう、褐色細胞腫で間違いありません」

疑いから確定へ──

→次の話 大学病院への転院が決定! そして褐色細胞腫の詳しい説明を受ける