数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

【A病院・入院4日目】褐色細胞腫の疑いあり!

前回まであらすじ
副腎に十数㎝の腫瘍があることが判明した私。腫瘍を詳しく調べるため、アイソトープ検査やら畜尿やら、いろいろな検査を行ったのだが…

ついに「褐色細胞腫」という単語が出てきた

前日に「副腎に腫瘍があるので調べる」と告げられ、入院4日目となる本日も検査をします。

放射性医薬品を注射し、それが腫瘍に定着したところで画像診断を行うアイソトープ検査。注射してから6時間後と24時間後に検査をするのですが、昨日に注射したため、今日は24時間後の診断。前日同様、検査用ベッドには40分ほど横になっていました。

午前中はそれだけで終了。昼食は鯖の竜田揚げ。付け合わせのパプリカソテーが意外に美味い。病院食でやたらパプリカという食材が登場するように思えるのは、私の気のせいだろうか。

昼食を終えてベッドでまったりしていると、担当の先生(内分泌科の医師)がやってきました。

「副腎にある腫瘍なんですが…」
「はい」
「まだ確定とまでは言えないんですが、検査結果をトータルすると、どうやら褐色細胞腫という病気のようでして」
「褐色細胞腫ですか!?」

私はまったくの医学素人ですが、褐色細胞腫という病気は知っていました。実は、以前に本で読んだことがあったのです。

「ご存知ですか?」
「えーと…アレですよね。刺激すると変なホルモンを出して血圧をドーンと上げるみたいな。すごい珍しい病気って聞いたことが」
「その通りです」

A病院では手術が不可能 転院が必要に

外部の検査機関に詳しい血液分析を依頼しており、その検査結果が来週に届くまでは確定ではないですけど、と前置きしたうえで先生は説明を続けます。

「最終的にはオペで切除することになりますが…」

まあそうなりますよね。十数㎝の腫瘍なんて、素人の私の感覚でもオペで切除一択かと。

「実はですね、うちの病院では無理なんですよ」

えっ…。私がいま入院しているA病院は、この地域でも相当大きな病院。ここで不可能ということは、かなり難しいオペなのか?

「先ほど(私)さんがおっしゃったように、褐色細胞腫は刺激すると血圧が急上昇します。手術中にそうなるとすごく危険なんですよ。ですので、手術中の身体のコントロールが重要で、麻酔科がかなりしっかりしている大学病院とかじゃないと…
「なるほど…」

マジか。これは思っていた以上に面倒な事態になったぞ。

「ということで転院になります。受け入れてくれるかどうかをB大学病院に打診しますので」

まずは転院先が決まらないと、何も進みません。今後の方針やスケジュールについては、現時点ではどうにもわからない状況になりました。

24時間の血圧測定を行う

褐色細胞腫と推定されるため、この日の午後から検査がひとつ追加されました。24時間の血圧測定です。

褐色細胞腫はカテコラミンというホルモンを過剰放出するのですが、これは血圧を上昇させる方向に働きます。そのため、褐色細胞腫の人は慢性的な高血圧になりやすいそうです。そのあたりを調べるため、24時間の血圧測定が行われました。

血圧測定というと、腕帯を巻いて空気を入れて膨らませて…をイメージするでしょうが、24時間測定もそれと同じ。私は常に腕帯を巻いておき、それと接続された機械(時計機能付き)が30分おきに自動でエアーを送り込み、血圧を測って記録する仕組みです。

夜寝ている時も容赦なく(?)測定されて腕が締め付けられるので、人によっては睡眠が妨げられるそうです。私は大丈夫でしたが。

褐色細胞腫に造影剤はNG 心臓のカテーテル検査は中止

24時間血圧計がセットされてしばらくすると、今度は心臓(循環器)の先生が来ました。

カテーテルと造影剤を使って心臓の検査をすると説明したんですけど…」

私は狭心症の疑いがあるため、冠動脈造影検査(CAG)と冠動脈形成術(PCI)なるものを受ける予定になっていました。すでに同意書も提出済みでしたが…

中止します」
「えっ、それはどういう…」
「○○先生から褐色細胞腫だと聞いたと思うんですが、褐色細胞腫があると造影剤が使えないんですよ」

褐色細胞腫に造影剤はNG。先生の説明によると、造影剤を使うと褐色細胞腫が刺激を受けてカテコラミンを放出し、血圧が急上昇するなどの危険が起きる可能性があるため、ダメだそうです。

「精度は劣りますが、MRIで対処します」

なるほど。ひとつ病気があると、一見関係なさそうな臓器の検査も制約を受けるのか。身体ってのはいろいろ連動しているんだなぁ、と妙に感心したのでした。

→次の話 【A病院・入院5日目~】転院先を探しつつ残った検査を続ける