数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

いったんB大学病院を退院! 仕事にも復帰…と思いきや

前回のあらすじ
B大学病院に入院中の私。褐色細胞腫を摘出する手術日がついに決定! …したのだが、準備に時間を要することもあり、2ヶ月も先なのであった。

手術は2ヶ月先なのでいったん退院を選択

先生が手術予定日を教えにきてくれた際、最後に聞かれたのは「入院継続か退院か」でした。

「手術まで日がありますけど、どうします? このまま入院しているか、それともいったん退院するか…」
「退院で!」

即答です。2ヶ月近く病院に閉じこもっているなんて、とても耐えられません。かえって身体を悪くしそうです。ですよねー、という雰囲気で先生もうなずきました。

「わかりました。あと1週間ほど様子を見て、それで大丈夫そうなら一回退院しましょう」
「手術の時は何日前に入院することになりますか?」
「う~ん…それは今の時点では何とも言えませんね」

先生いわく、手術1~2日前の入院になると思うが、もし手術に向けて身体のコンディションを整える必要があれば、1週間くらい前から入院することもありえるとのこと。

また、こちらの記事で説明したように、私の手術にはいろいろな科が絡んできます。手術が近づいて詰めの段階に入れば、各科から要望や確認したいことが出てくると思うので、それまで確実な入院日はわからないそうです。

入院生活で困ったのはネット環境

それから1週間、身体の変調もなく無事に過ぎました。特に検査をするわけでもなく、退屈しのぎに持ってきた本も読みつくし、スマホいじりくらいしか暇つぶしの方法がなくなりました。

スマホでネットをする時に困ったのが、B大学病院の入院病棟にはWi-Fiがなかったこと。モバイルデータを使うしかありませんが、ずっといじっているとデータ消費量がパネェことになります。

そこで私はセコい技を使いました。大学病院内に入っているコンビニやコーヒーショップには、フリーWi-Fiがあります。これが厳格に店内だけでしか使えないわけではなく、多少は外に電波が漏れてきまして…。入院病棟のロビーの窓際に張り付くと、この漏れてきたフリーWi-Fiの電波をキャッチできるので、そこでスマホをいじっていました(笑)

金曜日、先生がやってきて告げられました。「ひとまず大丈夫そうですので、月曜日に退院しましょう」とのこと。結局、今回のB大学病院への入院は17日間でした。

退院後の日常生活や仕事での制約は?

退院後ですが、手術入院までの間、毎週通院することになりました。手術に向けて薬を増やしていくので(→こちらの記事を参照)体調の確認や、予定日が近づけば手術の説明をするそうです。

また、血液検査もします。手術といえば輸血がつきものなので、血液型を調べなければいけません。これは万が一にも間違いがあってはいけないため、合計2回・別の日に検査します。なるほど。

退院後の日常生活については、注意点が書かれた書類を渡されました。褐色細胞腫は、下手に刺激するとカテコラミンを大量に放出して血圧が急上昇します。お腹を圧迫するような姿勢や、激しい運動はもちろんNG。娘を抱っこやおんぶするのもダメですね。

わずかながら食事にも制約が付されていて、「ワインとチーズは食べないように」。なぜ褐色細胞腫の人はワインとチーズがダメなのかは不明ですが、とにかくワイン以外の酒は飲んでよいと解釈しました。もし酒類全般がダメなら、「ワインはダメ」ではなく「酒はダメ」という書き方のはずですから。晩酌ができないのは辛すぎるので、これは助かりました。

それから必要なのが、職場に提出する診断書。手術はまだ先ですから、いったん仕事に復帰する余裕はあります。先ほど書いたように、褐色細胞腫を刺激するようなことはダメですが、デスクワークならOKだそうです。そのあたりを記載してもらいました。

A病院への緊急入院~B大学病院退院まで、合計1ヶ月ほど仕事を休んでしまい、同僚には迷惑をかけてしまいました。私が担当していたプロジェクトもあって、それは後輩に丸投げしてしまい、本当に申し訳なかったです。制約はあるけれど、いよいよ職場復帰だ。穴をあけた分は頑張って取り戻すぞ。

病院で貰った診断書は、職場にファックスしました。

会社からは「手術が終わるまでは休め」との命令

月曜日、予定通りB大学病院を退院しました。久々に妻と娘と会い、いっしょにごはんを食べる。お酒を飲み、お風呂に入り、我が家のふとんで寝る。家族と共に日常生活を送れることは、なんでもないようで実は幸せなことなんだなあと改めて感じました。

翌日、会社から電話がありました。上司です。

「診断書を産業医に見せたんだけど、これは就労の許可は出せないって。何かあったら大変だから、家で大人しくしてなさいと」

ぇマジすか?

「手術が○月△日って言ってたよね? だから○月いっぱいまでは療養休暇ということで」

これまでの1ヶ月休業に加えて、さらに2ヶ月以上の休み追加ということに…。いやいや、A病院でもB大学病院でも、直接診断した医師が「デスクワーク程度なら大丈夫」って言ってますよ。なんで診断すらしていない産業医からストップをかけられなきゃいけないんだ。プロジェクトの進捗も気になるし、さすがにこれ以上仕事を休むのはマズい。

…と思いましたが、これは「相談」ではなく「決定事項・命令」であり、抗議したところで覆らないでしょう。

まあいいか。後輩に負荷を掛けて経験を積ませるいい機会だし、何かあっても俺の責任じゃねーわ。そう開き直った私は、今夜の酒を買いにスーパーへ向かったのであった。

→次の話 B大学病院の外来へ通う そして塩分を摂りまくる