数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

手術の説明を受ける(1) 腫瘍がデカすぎて腹腔鏡では対応不可

前回のあらすじ
手術が終わるまでは仕事に行けず、療養休暇に突入した私。薬の服用や塩分摂りまくりなど、普段と違う面はあるものの、長い休暇を楽しんでいた。

手術の説明には両親が来てくれた

手術まであと2週間ちょっと。現在は週1で外来に通っていますが、今週はいよいよ手術の説明を受けます。一緒に説明を聞く人として、隣県在住の両親に来てもらいました。私の母親は元看護師なので、そういう人がいれば心強いです。

両親ではなく、妻が来た方がいいかもしれませんが、本人いわく「怖くて聞けない」そうで(笑) それから、私と妻が両方出張ったら、娘の面倒を誰かに見てもらわなければいけません。そういう理由もあって妻はパス。

両親には、手術の説明が終わったら我が家に寄ってもらい、妻と娘の顔を見ていってもらう予定です。コロナで全然帰省していないので、ちょうどいい機会です。

両親と時間を打ち合わせ、当日朝、病院近くの駅で落ち合いました。お土産を満載した両親。直接顔を合わせたのは1年と数ヶ月ぶりです。

先生の説明が始まる

3人でB大学病院に入りました。私はもうすっかり慣れっこになった再診受付を済ませ、外待合に座ります。月曜日の午前中ということもあり、人がいっぱいです。

両親は別に一緒に待たなくてもいいので、「順番が近くなったら連絡するからここに来て」と伝え、院内の喫茶店に行ってもらいました。

外待合から中待合に呼ばれた段階で、両親を呼び戻します。前の人の診察が長い…。中待合でけっこう待ち、予定時刻より少し遅れて呼ばれました。場所は特別な部屋などではなく、いつもと同じ診察室です。先生と合わせて4人入ると、なかなか密です。両親は椅子に、私は診察用ベッドに腰掛けました。

まずはこれまでの経過や検査結果、現在の状況などの説明から始まりました。本人たる私は当然説明を受けていますし、それを両親にも報告していましたから、全員が知っている内容ではあります。とは言っても、話には順序というものがありますから、手術の説明をするための前振りとして必要ですね。

「…というわけで、現在に至るのですが」

前振りの話が終わり、いよいよ本題。手術の話です。

腫瘍がデカくて腹腔鏡では対応できない

先生いわく、「手術の類型としてはシンプル」だそうです。再建を行うとかリンパ節をいじるとかの作業はなくて、腫瘍を切って取り出せば終わりなので。

腫瘍の摘出手術というと、お腹をド派手に切り開くイメージがあります。ドラマの手術シーンみたいな。しかし一般的に、褐色細胞腫の摘出は腹腔鏡手術で行います。いや、褐色細胞腫自体が珍しい病気なので、「一般的」と書くのは変かもしれませんが。

とにかく腹腔鏡手術、お腹に1㎝程度の穴を開けて、そこから器具を差し込んで行う手術です。ご存じの方も多いでしょう。メリットとしては、お腹の傷が小さく済むので見た目がいいこと。傷が小さい = 術後のダメージも小さく、復帰も早いです。腹腔鏡手術で褐色細胞腫を摘出した場合、普通は退院まで1週間かからないそうです。

ただ、これは腫瘍が数㎝までの話。褐色細胞腫は普通は数㎝ほどの大きさですが、私の場合は18㎝と超巨大なので、腹腔鏡では対応できず開腹手術になるとのこと。

いや、厳密には「切る」だけなら腹腔鏡でも可能だそうです。ただ、最終的には「取り出す」必要があり、18㎝のブツを取り出すためにはお腹を大きく切り開かなければいけません。どうせ開腹が避けられないなら、最初から開腹した方が間違いないでしょ、というわけです。

なお、開腹だけだと視野が確保しきれないかもしれないので、開胸も予定していると言われました。どんだけデカいんだよ。

左右の副腎のうち褐色細胞腫のある右副腎を摘出

私の褐色細胞腫は、右の副腎にあります。これを副腎ごと摘出します。このへんは素人なのでよくわかりませんが、副腎と褐色細胞腫が一体化しているので、副腎の正常な部分だけ残すのは無理 → 副腎ごと摘出、ということでしょうかね?

とにかく、右の副腎は摘出するのでオサラバです。

副腎はホルモン放出をつかさどる臓器です。それを摘出してしまって大丈夫? と思うでしょうが、副腎は左右両方にあり、どちらか1個あれば大丈夫。手術後は、左の副腎に頑張ってもらうことになります。

補足ですが、もし副腎を両方取ってしまった場合、副腎から放出されるホルモンがなくなってしまうので、ホルモンを補う薬を一生飲み続けなければなりません。

先生の話だと、現状はおそらく褐色細胞腫のある右副腎が“主系”で、残される左副腎は“従系”ではないかと。つまり、左副腎は今まで右副腎に仕事を任せてあまり働いていなかったかもしれないので、手術後にきちんと機能してくれるかが重要なポイントだそうです。術後に血液検査をして、左副腎が順調にホルモン放出していることを確認してから退院となります。

俺の左副腎、これからはお前しかいないんだぞ。頑張ってくれー、と応援したくなりました(笑)

長くなったので、今回はここまでにします。次回の記事は、手術の危険性についてです。

→次の話 手術の説明を受ける(2) 危険な手術だと告げられる