大学病院という組織への悪いイメージが180度変わった
「大学病院は一流と世間では思われているけど、実はロクでもない」という内容の本を読んだことがあります。いかに大学病院のレベルが低く、しょうもない組織であるか。日本の医療界にとって、どれほど害悪な存在であるか。そのあたりについて力説されていました。
民間病院の場合、医療レベルが低かったり、医師や看護師が傲慢な態度をとったり、サービス面が悪かったりすれば、たちまち患者から敬遠されるでしょう。その点、大学病院はそのあたりが雑だったとしても、ブランドイメージのおかげで安泰。競争原理もあまり働かないためレベルは上がらず、殿様商売的な態度も横行しているのでは。
本の影響もあり、自分の中にはそういうイメージがありました。
「大学病院はロクでもない」なんて全く思えなかった
ところが今回、B大学病院にお世話になって、それがまったくの偏見だったことを思い知らされました。イメージが良い方向に180度変わったのです。
医師や看護師、病院スタッフに嫌な対応をされたことは、一度もありませんでした。非常に丁寧・親切で、治療・入院中は気持ちよく過ごすことができました。
院内の案内表示などは非常にわかりやすく、検査受付機などの設備も使いやすかったです。わかりにくいものを、わかりにくいまま放置している感じは、まったくありません。
医療レベルが低いというのも、当てはまらないでしょう。私が受けた褐色細胞腫の切除は、もともと難しいとされる手術で、しかも今回は18㎝という大きさによって難易度がさらにアップ。これをきっちりやってのけ、術後のトラブルも特になく、私の身体を元気に戻してくれたのですから、プロの仕事だと思います。
総体的に、「さすが大学病院」という印象でした。もっとも、私がお世話になったB大学病院は高レベルだけど、他の大学病院は違うという可能性もありますが。
掟破りの検査を行う マニュアルに従うだけの組織でもない
一番びっくりしたのは、手術前に行なったCTの検査です。手術前に造影剤を使ってCTを撮りたいと提案されたのですが、これには心底驚き、そして大学病院という組織を見直しました(笑)
というのは、こちらの記事で説明しましたが、「褐色細胞腫の患者に造影剤を使うのは禁忌」と言われているからです。造影剤が褐色細胞腫を刺激し、血圧が急上昇する危険があるのです。
私の場合は、褐色細胞腫(腫瘍)が巨大だったので、造影剤CTによって血管と腫瘍の位置関係を把握したうえで手術に臨みたい、と言われました。要するに、デメリット(造影剤を使う危険)よりもメリットが上回るとの判断です。
近年、エビデンスやガイドラインといった言葉がよく使われます。ただ、なんでもかんでもエビデンスやガイドラインに従うのが正解とは思えません。
というのも、患者の病状や置かれた環境は、ひとりひとり違うからです。エビデンスやガイドラインに軸足を置きつつも、その患者特有の要素も考慮して、最適と思われる治療法を考える。私は医療の素人ですが、それが大切なのではと思います。
大学病院というと、マニュアルの類を絶対視して、そこからはみ出すことをしない保守的な組織というイメージがあります。しかし、私個人の病状に合わせて「褐色細胞腫に造影剤は禁忌」を堂々と破って(?)いますから、やる時は思い切ったことをやるのだなあと感心しました。
大学病院への悪いイメージがなくなった
というわけで、今回の入院や手術は、大学病院への悪いイメージが払拭された経験でした。
もちろん、どうしようもなく悪いところも、大学病院には存在するのでしょう。ただ、私が今回経験した部分に関しては、なんら不満はなかったと申し上げておきます。