数万人に一人の病気 褐色細胞腫になったときの体験談

~通常なら数㎝の腫瘍は、なんと大人の頭サイズだった!~

褐色細胞腫 10年前から思い当たる症状はあった

このブログでは、褐色細胞腫という珍しい病気を“引き当てて”しまった私の経験談を書いていきますが、まずは簡単なプロフィールを紹介します。

  • 35歳男性。優しい妻と可愛い娘の3人家族
  • 体型は標準~やや痩せ型
  • 泊まり勤務を含む変則勤務の職種

自分で言うのもなんですが、公私ともに充実し、脂がのってきている社会人です。病気という言葉とは無縁の。まさか自分がこんな目に遭うとは思っていなかったです。

しかし、今になって振り返れば、10年ほど前にはすでに症状が出ていました。

褐色細胞腫の典型的な症状 私にも出ていた

褐色細胞腫の典型的な症状は、以下のとおりです。

  • 高血圧
  • 頭痛
  • 動悸
  • 吐き気
  • 多量の発汗
  • 立ちくらみ
  • 糖尿病

褐色細胞腫では高血圧が“お約束”らしいですが、私は高血圧はありませんでした。健康診断でも、上が120・下が85程度。私のケースは珍しいようです。

ただ、その他の症状はビンゴ。24~25歳頃にはすでに症状が出ていました。激しい動悸はありましたし、それに伴う頭痛や吐き気で苦しんだことは数知れず(実際に吐いたことはほぼなかったですが)。立ちくらみで頭がフラフラし、身体から力が抜けて倒れそうになることもありました。同僚から「顔が真っ白だよ? 大丈夫?」と指摘されたことも。

しかし、当時の私は特におかしいとは思いませんでした。というのも、私は変則勤務の職種で働いており、泊まり勤務が含まれるなど、身体に優しい仕事ではなかったからです。「こういう仕事をしてるのだから、身体がしんどい時だってあるさ」程度の認識でした。会社の健康診断でも、何も異常は発見されなかったですし。

HbA1cの値がジワジワ上昇 糖尿病予備軍に

ところが、24歳頃から、健康診断である項目の値が上昇し始めました。HbA1cという項目です。

HbA1cは、血糖値関係の項目です。おおむね直近3ヶ月の平均的な血糖値を示しています。そのものズバリの「血糖値」という項目との違いは何かというと、血糖値はリアルタイムで変化します。食事や甘い物を食べた直後には上がり、時間が経てば下がるというように、一日の中で変動します。しかし、HbA1cにはそうした短期の変動がない。

要するに、HbA1cは長期の指標、血糖値は短期の指標です。

私のHbA1cは、24歳頃には5.5でした。まあ標準的な値です。ところが、これが毎年律儀に0.1ずつ上昇するようになり、30歳になる頃には6.0を超えていました。HbA1cは6.2が標準値の上限で、これを超えると糖尿病に足を踏み入れてしまいます。

糖尿病というと、肥満の人がなるイメージですよね。しかし私は171㎝・63㎏で瘦せ型。さらに、運動は定期的にしていましたし、血糖値を上昇させる糖質を摂りすぎているとも思えない。これはもう、糖尿病になりやすい体質なんだろうか?

私の母親(隣県に在住)は看護師なのですが、相談すると、病院を探して定期的にHbA1cを計ってもらいなさいと強く言われました。

乱暴に言えば、糖尿病とは「血管が傷む病気」です。末端の細い血管からやられていくので、失明したり、手足の指が壊死して切断になったり、腎臓がダメになって人工透析が必要になったり…。母親は現場で、そうした悲惨な事例を実際に目撃していたそうです。

「糖尿病は絶対に甘く見るな」
「自覚症状が出た時には手遅れ」
「自己判断で通院をやめてはいけない」

身体状況の把握こそが対糖尿病の第一歩。健康診断の結果を近くの総合病院に持っていき、それからは3~4ヶ月に一度、血液検査でHbA1cを測定してもらうようになりました。自分でも糖尿病についていろいろ調べるようになり、いわゆる「糖質オフ」を取り入れるなど、血糖値を上昇させないことを心掛けました。

それでもHbA1cの数値は6.2~6.3あたりをウロウロ。30代でこれは、立派な糖尿病予備軍です。担当の内科の先生も、解せないという雰囲気でした。

「まだ30代前半だし、身体も痩せ型だよねぇ。なんでこうなるかなぁ…。とにかく油断せずに通院を続けてください」

相変わらず症状は改善しない 心臓の検査をしても異常なし

HbA1cの微妙な数値だけではなく、その他の症状も続いていました。息が切れるような運動をすると、しばらくして動悸や吐き気が襲ってくる。寝ている時に動悸で突然苦しくなり、目が覚めてしまうことも。

相変わらず健康診断では何も異常は発見されません。が、さすがに変だと思い、いつもの総合病院で心臓の検査をしてもらったこともあります。やたら動悸が出るのは心臓が悪いのではないかと…。心電図・心エコー・運動負荷検査・24時間ポータブル心電図。しかし結果は異常なし。

因果な身体だなぁと嘆きつつ、ごまかしごまかしで日々を過ごしていました。しかし35歳のある日、ついに「その時」がやってきました。

→次の話 その日ついに「発作」が起きた 救急外来に駆け込んだところ…